「スナックのママさんが来てくれる」から始める支援
以前より活動する機会が減り、家で過ごす時間が増えていた。
その後、受診したところ認知症と診断された。
特に予定がなければ、昼間からお酒を飲むこともある。
そして夜になると眠れない。
生活のリズムも少しずつ乱れていました。
本人が介護サービスを望まないときも、本人らしさや楽しみにできる関係が、支援の入口になることがあります。
家族も、その対応に悩み、
「もう、どうしたらいいのか分からない」
という状態になっていました。
今回考えたのは、お酒をやめさせる方法でも、すぐにデイサービスへ通ってもらう方法でもありません。
その人が受け入れられる形で、まず一つ支援の入口をつくれないだろうか。
そんなことでした。
※この記事は、個人が特定されないよう、内容の一部を変更・再構成しています。
昼間からお酒を飲むことだけを見ない
その方は、以前より活動することが少なくなり、家で過ごす時間が増えていました。
特に予定がなければ、昼間からお酒を飲むこともある。
そして夜になると眠れない。
生活のリズムも少しずつ乱れていました。
認知症に伴う言動で家族が対応に困ることもあり、介護する家族にも疲れがたまっています。
こういう話を聞くと、
「お酒を減らした方がいい」
「昼間に活動してもらった方がいい」
「デイサービスやデイケアを利用したらいい」
と考えます。
私もそう思います。
でも、それが正しいからといって、本人がすぐ受け入れてくれるとは限りません。
「なぜ俺が介護サービスを使うのか」
本人と話してみると、困っていることばかりではありませんでした。
外から来た人に対しては、きちんと対応されます。
昔のことや、自分がどんな人生を歩いてきたのかという話もされます。
人と話すこと自体が嫌なわけでもなさそうです。
そして何より、
外から来た人には失礼のないようにしたい。
そんな、その人らしさが残っているように感じました。
一方で、
「介護サービスを利用しましょう」
「訪問看護や訪問リハビリを入れましょう」
と言われたら、
「なぜ自分が介護を受けなければならないのか」
と思われるかもしれません。
そこで、私は少し違う入り口を考えました。
スナックのママさんが家に来てくれるような感覚
少し乱暴なたとえですが、
「スナックのママさんが、自分の家まで話をしに来てくれる」
そんな感覚ならどうだろうと思いました。
もちろん、お酒は出ません。
実際に来るのは、訪問看護師やリハビリの専門職などになるかもしれません。
でも本人にとっては、
「介護を受ける時間」
ではなく、
「家に人が来て、その人と話したり過ごしたりする時間」
くらいの感覚の方が、受け入れやすいのかもしれません。
「今日は誰かが家に来る。その人と話せるのが少し楽しみ」
そんな時間です。
昔の話をする。
仕事をしていた頃のことを話す。
一緒にお茶やジュースを飲む。
その中で必要なら、身体を動かしたり、薬のことを確認したりする。
最初から「介護される人」として関わるのではなく、その人が心地よく受け入れられる関係から始めてみる。
そこに今回の支援の入口があるように思いました。
「夕方に人が来る」ことにも意味がある
そして、もう一つ考えたことがあります。
たとえば毎週決まった日の夕方に、その人が来る。
あらかじめ、
「今日は夕方に人が来ますよ」
と伝えておく。
カレンダーにも書いておく。
そして、
「来られるまでは、お酒を飲まずに待っていてもらえませんか」
とお願いしてみる。
もちろん、それだけで毎回うまくいくとは限りません。
ただ、その方には、外から来る人にはきちんと対応しようとする一面があります。
そうであれば、
「夕方に人が来るから、それまでは飲まずに待っておこう」
という日が一日でもできるかもしれません。
お酒を「やめなさい」と言うのではありません。
その人の性格や大切にしてきたことを使って、生活の中に一つ予定をつくる。
その結果として、昼間の飲酒が少し減ったり、生活のリズムが変わったりする可能性があります。
サービスを入れることが目的ではない
今回の支援は、まだこれからです。
実際にやってみなければ、本人がどう受け止めるかは分かりません。
だからこそ、
「訪問看護や訪問リハビリを入れれば解決する」
とも思っていません。
その人の性格。
これまでの人生。
何を大事にしてきたのか。
今、何を楽しめそうなのか。
認知症の状態。
家族がどれくらい疲れているのか。
そうしたことを見ながら、本人と家族の両方にとって無理の少ない形を探していく必要があります。
また、本来のサービス内容を隠してだます、ということでもありません。
制度の名前だけを前面に出すのではなく、
「この人にとって、この時間にはどんな意味があるのか」
を考えて説明する。
私はそのことが大切なのだと思います。
まずは、楽しみに待てる人をつくる
理想を言えば、昼間に活動する場所ができて、生活リズムが整い、家族の負担も減っていく。
でも、そこまで一気に進めない人もいます。
そんなときに、
「デイサービスに行けないから仕方がない」
で終わるのではなく、
そして、
「今日はあの人が来る日だ」
と本人が少し楽しみにできる。
その関係ができれば、そこから外に出ることや、別のサービスへつながる可能性もあります。
今回の相談を通して考えたのは、
支援は、必要なサービスを当てはめることから始めるのではなく、その人が受け入れられる入口を探すところから始まることもある
ということでした。
「スナックのママさんが家に来てくれる」。
少し変わったたとえかもしれません。
でも、そのくらい本人にとって自然で、少し楽しみにできる時間から始める。
そこから生活のリズムが少し変わり、家族の負担も少し軽くなる。
そんな支援になればいいなと思っています。
