どんな症状があれば受診すればいいのかーー早期受診の目安を聞かれて考えたこと
先日の出前講座で、少し答えに迷った質問がありました。
「早期受診が大切と言われますが、どんな症状が出たら受診すればいいのでしょうか」
確かにそうだなと思いました。
私たちは普段、「認知症は早めに受診してください」と伝えることがあります。
でも、では何をもって「早い」とするのか。
どんな変化があれば、受診した方がいいのか。
そう聞かれると、意外と簡単には答えられませんでした。
早期受診って、いつなんだろう
特に、高齢の夫婦二人で暮らしている場合などは、なおさら分かりにくいのだと思います。
年齢を重ねれば、物忘れが増えることもあります。
少し理解するまでに時間がかかることもありますし、判断に迷うことも増えてきます。
毎日一緒に生活しているからこそ、
「これは年齢のせいなのか」
「それとも病院に行った方がいいのか」
その境目は、なかなか分からないのかもしれません。
その質問を受けたとき、私はその場では少し曖昧な答えしかできませんでした。
物忘れの違いを身近な場面に置き換えて考えた話は、「普通の物忘れと認知症の物忘れ――出前講座で感じたこと」に書いています。
物忘れだけではないのかもしれない
そのあと、あらためて考えている中で思い出したのが、クリスティーン・ブライデンさんの話でした。
ブライデンさんは、認知症の初期の頃の感覚について、頭の中に霧がかかったような感じや、複雑な状況になると、どう判断すればいいのか分からなくなるような体験を語っています。
その話を思い出して、
受診のきっかけは、単に「物忘れが増えたかどうか」だけではないのかもしれないなと思いました。
今まで普通にできていたことに時間がかかる。
いくつかのことが重なると、どうしていいのか分からなくなる。
買い物や支払い、予定の調整などで間違いが増えてくる。
慣れているはずの場面で、戸惑うことが増えてくる。
そして、周りの人が、
「なんとなく以前と違う」
「あの人らしくない」
と感じる。
こうした変化も、受診を考える一つのきっかけになるのだと思います。
「以前と少し違う」という行動や性格の変化については、「最近の研究でわかってきた「認知症は物忘れから始まるとは限らない」ということ」でも考えています。
受診することにも意味がある
今回考えていて、もう一つ大事だと思ったことがあります。
それは、受診する意味は「認知症かどうかを決めること」だけではないということです。
物忘れや判断力の低下の中には、認知症以外の病気が隠れていることもあります。
中には、治療によって改善するものもあります。
だからこそ、一度きちんと評価しておくことには意味があります。
MRIなどで、今の脳の状態を確認しておくこともその一つです。
今後、脳梗塞など新たな変化が起きたときに、以前の画像と比べることができます。
「今の状態を一度見ておく」
それだけでも、受診する意味はあるのだと思います。
そして今は、MCI(軽度認知障害)など、より早い段階で気づくことの意味も変わってきています。
治療の選択肢が増えてきたことで、以前よりも早い段階で評価を受けることの意味は大きくなっています。
「少し気になる」が受診のきっかけでもいい
認知症の早期発見というと、どうしても「物忘れ」に目が向きます。
でも、今回の質問をきっかけに考えてみると、
「今までできていたことが、なんとなくうまくできなくなってきた」
「以前とは少し違う」
という変化も、とても大事なのだと思います。
明らかな症状が出るまで待つ必要はないのかもしれません。
本人が、
「最近、なんだか考えにくい」
「前より頭がうまく働かない気がする」
と感じたとき。
あるいは家族が、
「少し気になるな」
と感じたとき。
その段階で、一度相談してみる。
それも十分に「早期受診」なのだと思います。
今回、出前講座で質問してもらったことで、私自身もあらためて考えることができました。
「早期受診してください」と言うだけではなく、
その人の日常の中で、これまでとは違う変化が出てきたとき。
そこが、受診を考える一つのタイミングなのかもしれません。
変化に気づいたあと、本人にどう受診を勧めるかについては、「『受診して』と言う前に、考えたいこと」でも考えています。
