認知症看護・ケア

本当に支援が必要な人ほど、相談に来ない

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私の地域では、高齢化率が40%を超えています。

認知症カフェやもの忘れ相談会、出前講座など、地域にはさまざまな取り組みがあります。

でも最近、考えることがあります。

本当に支援を必要としている人ほど、こうした場所には出てこられないのではないか。

そして、その人たちを見つけるためには、相談を待つだけではなく、私たちのほうから地域へ出ていく必要があるのではないかと思っています。

相談の場に来られる人だけでは届かない

認知症カフェやもの忘れ相談会に来られる方は、それなりに健康や認知症への関心が高い方が多いように感じます。

「最近、もの忘れが気になる」
「認知症について知っておきたい」
「家族のことを相談したい」

そう思って、自分から足を運ぶことができる。

もちろん、そうした方への支援はとても大切です。

公民館などに出向いて出前講座を行うことも、認知症について知ってもらう大切な機会になっています。

ただ、それだけでは届かない人がいます。

「困っています」と言えない人がいる

例えば、家の中に物やゴミがたまり、いわゆるゴミ屋敷のような状態になっていても、本人自身はそれほど困っているとは感じていない。

認知症などによって、自分の生活の変化に気づきにくくなっていることもあります。

また、家からほとんど出なくなり、人とのつながりが少なくなっている人もいます。

そうした人には、そもそも「困ったら相談してください」という声自体が届いていないことがあります。

認知症カフェや相談会の案内を出しても、地域の集まりに参加しなければ、その情報に触れる機会すらありません。

だからこそ、相談を待つだけではなく、こちらからつながりに行く必要があるのだと思います。

「家族と暮らしているから大丈夫」とは限らない

もう一つ、見つけにくいと感じるのが、家族と一緒に暮らしている人です。

一人暮らしの高齢者であれば、地域でも「一人だから少し気にかけよう」と意識されることがあります。

しかし、息子や娘と二人で暮らしていると、

「家族がいるから大丈夫だろう」

と思われやすい。

でも、必ずしもそうとは限りません。

同居している家族自身にもさまざまな事情があり、家族自身が支援を必要としていたり、外部に相談することが難しかったりする家庭もあります。

「家族と暮らしている=支援がある」とは限らない。

むしろ家族と暮らしていることで、外から生活の状況が見えにくくなっている世帯もあるのではないかと思います。

出前講座を「伝えるだけの場」にしない

だから最近、公民館などで行う出前講座の意味も、少し違って見えるようになりました。

認知症について説明する。

早期受診の大切さを伝える。

もちろん、それも大切です。

でも、それだけではなく、地域の方から話を聞く場にもできるのではないかと思うのです。

「最近、姿を見なくなった人はいませんか」

「ほとんど家から出てこない人はいませんか」

「少し生活が心配な世帯はありませんか」

地域で暮らしている人だからこそ、気づいていることがあります。

もちろん、個人情報への配慮は必要ですし、単に「気になる人を教えてください」という話ではありません。

出前講座などをきっかけに地域との関係をつくり、その中から支援につながる小さなサインを拾っていく。

そういう役割もあるのではないかと思っています。

地域の人と一緒に活動しながら、少人数でも意図をもって伝えることについては、「花を植えるだけで終わらせない――少人数でも、意図をもって伝えることに意味がある――」で考えました。

待つ支援から、出ていく支援へ

孤立や社会的なつながりの少なさは、認知症を考えるうえでも無視できません。

だからこそ、相談窓口をつくって待っているだけでは届かない人がいます。

相談や訪問にも費用がかかると思い、相談をためらう人がいることについても、別の記事で考えました。

病院や施設、地域包括支援センターなど、地域の支援に関わる私たち自身が外へ出ていく。

そして地域の人たちとつながりながら、まだ支援につながっていない人の存在に気づいていく。

支援を求めることができない人に、支援する側から近づいていく。

これからは、そんな取り組みがもっと必要になるのではないでしょうか。

「見つけに行く支援」にも仕組みが必要

ただ、こうした活動を病院や施設、地域包括支援センターなど、それぞれの現場の努力だけに任せるのには限界があります。

地域へ出向くには、人も時間も必要です。

だから私は、こうした活動そのものに、国や自治体から予算がつく仕組みがあってもよいのではないかと思います。

相談に来た人への支援には、さまざまな制度があります。

その一方で、

「相談に来られない人を見つけに行くこと」にも、きちんと価値をつける。

地域へ出て、人とつながり、まだ表面化していない生活上の変化に気づき、必要であれば医療や介護、地域の支援へつないでいく。

そうした取り組みに人や予算を充てることができれば、認知症の早期発見、そして早い段階からの支援にもつながるのではないでしょうか。

認知症カフェや相談会に来てくれる人を支えることも大切です。

でも、その向こう側には、声を上げられない人、声が届いていない人、そして自分自身が困っていることに気づいていない人がいます。

その人たちを、地域の中でどう見つけ、どうつながっていくのか。

高齢化が進む地域で働きながら、これからもっと考え、実際に動いていかなければならないことだと思っています。

プロフィール
しるべ
しるべ
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師として、認知症疾患医療センターで認知症に関わっています。 これまで急性期病院での勤務経験があり、ケアマネジャー資格、家族の介護経験もあります。 専門職としてだけでなく、家族として悩んだ経験も含め、日々の関わりの中で感じたことや気づいたことを、自分の言葉で綴っています。 正解を押しつけるのではなく、「こんなこともあるよね」と一緒に考えられる場所にしたいと思っています。
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