認知症と暮らし・家族

もの忘れだけではない。早期にきづきたい「お金」と「薬」①

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先日、アルツハイマー病についての講演を聞く機会がありました。

その中で、認知機能の低下と、日常生活の中で必要になるさまざまな能力との関係を示したデータが紹介されていました。

物忘れが目立たなくても、金銭管理や服薬管理には比較的早い段階から変化が表れることがあります。「できるか」ではなく「以前と同じようにできているか」が、気づきのポイントです。

電話を使うこと、金銭管理、服薬管理、移動・外出、家事、洗濯など、それぞれの能力が認知機能の低下に伴ってどのように変化していくのかを示したものです。

そのデータを見ると、金銭管理と服薬管理は、比較的早い段階から低下していることが分かりました。

一方で、電話や洗濯などは、認知機能がある程度低下しても比較的保たれている傾向が示されていました。
※洗濯など一部の家事項目は、女性のみのデータです。

ここには、認知症の早期発見を考えるうえで大切なヒントがあると思います。

まだしっかりして見えても、お金の管理は難しくなることがある

認知症というと、

「物忘れが増える」

というイメージが強いと思います。

でも、アルツハイマー病では、周囲から見るとまだ比較的しっかりしている早い段階から、金銭管理のような複雑なことに変化が出ることがあります。

たとえば、

以前は問題なくできていた振込に時間がかかる。

ATMの操作で迷う。

請求書を支払ったかどうか分からなくなる。

通帳やカードの管理がうまくできなくなる。

こうした変化です。

電話もできる。

日常会話もしっかりしている。

洗濯など、これまでの生活習慣も保たれている。

それでも、お金の管理を詳しく見ると、以前とは違ってきていることがあります。

ここは、とても大事なところだと思います。

服薬管理も同じ

もう一つ注目したいのが、薬の管理です。

毎日決められた薬を、自分で正しく管理して飲むためには、

「今日は飲んだか」

「何時に飲むか」

「何錠飲むか」

といったことを覚え、確認し、実行する必要があります。

認知機能が少し低下すると、

薬がたくさん余る。

予定より早く薬がなくなる。

飲んだことを忘れて、もう一度飲もうとする。

家族の声かけがないと飲めなくなる。

といった変化が出ることがあります。

それでも本人は、

「ちゃんと飲んでいるよ」

と言うこともあります。

だからこそ、本人の言葉だけではなく、実際の薬の残り方や、これまでとの違いを見ることが大切です。

「できるか」ではなく「以前と同じようにできているか」

認知症になる前には、MCI(軽度認知障害)と呼ばれる段階があります。

MCIでは、日常生活はおおむね自立しています。

そのため、

「一人で生活できているから大丈夫」

と思われることもあります。

でも実際には、

ATMは使えるけれど、以前よりずいぶん時間がかかる。

薬は自分で飲んでいるけれど、飲み忘れが増えている。

支払いはできているけれど、家族に確認することが増えている。

そんな小さな変化が出ていることがあります。

つまり大切なのは、

「できるか、できないか」ではなく、「以前と同じようにできているか」

という視点です。

銀行や薬局は、早期発見の入り口になるかもしれない

このデータを見ながら、私はこんなことを考えました。

金銭管理が早い段階から変化しやすいのであれば、銀行や郵便局の窓口で働く方は、その変化に気づける立場にいるのではないか。

服薬管理の変化であれば、薬局の薬剤師さんも同じです。

もし銀行員の方が、

「認知機能が低下すると、早い段階から金銭管理に変化が出ることがある」

という知識を持っていたら。

もし薬剤師さんが、

「薬の残り方や飲み方の変化が、認知機能低下のサインになることがある」

と知っていたら。

「高齢だから仕方がない」

で終わらせず、

「以前と少し違うな」

と気づくことができるかもしれません。

もちろん、銀行員や薬剤師が認知症を診断するわけではありません。

大切なのは、

気づいて、つなぐこと

です。

「一度、かかりつけの先生に相談してみませんか」

「検診と思って病院に受診してみてはどうでしょう」

そんな一言が、早期受診につながるかもしれません。

相談を待つだけでは届かない人に、地域の中でどう気づくか。そのことは、「本当に支援が必要な人ほど、相談に来ない」でも考えています。

今は、早く気づく意味が以前より大きい

今は、アルツハイマー病によるMCIや軽度認知症の段階であれば、条件によっては抗アミロイドβ抗体薬という治療を検討できる時代です。

もちろん、MCIであれば誰でも使える薬ではありません。

詳しい検査を行い、アルツハイマー病によるものかどうかを確認したうえで、さまざまな条件を満たす必要があります。

それでも、

早く受診したことで、治療を検討できる時期に間に合う可能性がある。

これは、とても大きなことだと思います。

認知症の早期発見というと、どうしても「物忘れ」に目が向きます。

でも、それだけではありません。

お金の管理はどうだろう。

薬の管理はどうだろう。

そこに目を向けることも、とても大切だと思います。

そして、

「できているから大丈夫」

ではなく、

「以前と同じようにできているだろうか」

と考えてみる。

銀行、郵便局、薬局、家族、地域の支援者。

生活の中で高齢者と接する人たちが、この視点を少しずつ持つようになれば、病院に来るのを待つだけではなく、地域の中から早期受診につながる人が増えるかもしれません。

物忘れだけを探さない。
「お金」と「薬」の変化にも目を向ける。

そこから始まる早期受診が、その人のこれからの選択肢を広げることにつながるのではないかと思います。

明日は、

「なぜ早期受診が、その人のその後を大きく変える可能性があるのか」

について書いてみたいと思います。

早く気づくことが、その後の選択肢にどうつながるのかは、続きの「もの忘れだけではない。早期にきづきたい「お金」と「薬」②」に書いています。

プロフィール
しるべ
しるべ
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師として、認知症疾患医療センターで認知症に関わっています。 これまで急性期病院での勤務経験があり、ケアマネジャー資格、家族の介護経験もあります。 専門職としてだけでなく、家族として悩んだ経験も含め、日々の関わりの中で感じたことや気づいたことを、自分の言葉で綴っています。 正解を押しつけるのではなく、「こんなこともあるよね」と一緒に考えられる場所にしたいと思っています。
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