日々の気づき

『受診して』と言う前に、考えたいこと

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今日は、65歳未満の方について、若年性認知症を疑うような相談を受けました。

まだ医療機関には受診していない方です。

家族が最近の様子を心配し、地域包括支援センターに相談したとのことでした。

受診を勧める一言は、本人にとって、仕事や運転、これからの暮らしが変わるかもしれない重い提案です。受診につなげることだけをゴールにせず、本人が受診の意味を理解し、その後の生活まで一緒に考える必要があります。

財布を置いた場所が分からなくなる。

車をどこに停めたか分からなくなる。

同じことを何度も話す。

そんなことが少しずつ増えているようでした。

家族としては、当然心配になります。

「一度、病院で診てもらった方がいいのではないか」

そう思うのも無理はありません。

でも、この相談を聞きながら、私は少し考えました。


「認知症かもしれないから病院へ」だけでいいのだろうか

本人に受診を勧めるとき、

「最近もの忘れが多いから」

「認知症かもしれないから」

という言葉だけで、本当に受診しようと思えるでしょうか。

もし自分だったらどうだろう。

突然、

「最近ちょっとおかしいよ。一度、認知症の検査を受けたら?」

と言われたら。

たぶん、私はいい気持ちはしません。

「そこまでおかしくない」

と思うかもしれない。

腹が立つかもしれない。

怖くなって、むしろ病院から遠ざかるかもしれません。

だから、受診を勧めるときには、受診する意味と、ご本人にとってのメリットをきちんと伝える必要があると思っています。


受診する意味と、ご本人にとってのメリット

今回のように、まだ診断を受けていない65歳未満の方で認知機能の変化が疑われる場合、若年性認知症も含めて原因を調べていくことになります。

ただ私は、本人に

「認知症かもしれないから、病院に行ってください」

と伝えるだけでは十分ではないと思っています。

周囲から、

「最近少し変わった」

「もの忘れが増えた」

と言われているのであれば、

「認知症かどうかの確定診断を受けるためだけではなく、一度きちんと今の状態を評価してもらってはどうでしょう」

と伝える方が、受け入れやすいのではないでしょうか。

診察では、認知機能検査や血液検査、必要に応じてMRIなどの画像検査を行い、今起きている症状の原因を調べます。

認知症に似た症状を起こす別の原因が見つかり、原因によっては治療による改善が期待できることもあります。

また、画像検査を受けておくことで、その時点の脳の状態を確認できます。

将来、脳血管疾患や認知症の症状が出たときに、以前の画像と比較することで、脳にどのような変化が起きているのかを評価する材料になることもあります。

だから、

「認知症を決めつけるための受診」

ではなく、

「今の自分の状態を一度確認しておくための受診」

と考えてもらう。

私は、そのように説明することも一つの方法だと思います。

「健康診断を受けるような気持ちで、一度相談してみませんか」

くらいの伝え方であれば、受診への心理的なハードルを少し下げられるかもしれません。

大切なのは、怖がらせて受診につなげることではなく、本人にとって受診する意味やメリットをきちんと伝えることだと思います。


でも、診断を受けるということは簡単ではない

ここで、もう一つ考えなければならないことがあります。

もし自分が診断を受ける側だったら、ということです。

若くて、まだ仕事をしている。

車も運転している。

家庭での役割もある。

そんな中で、

「認知症かもしれません」

と言われたら。

その一言で、これからの生活が一気に変わってしまうように感じるかもしれません。

仕事はどうなるのか。

車の運転はどうなるのか。

家族にはどう話せばいいのか。

職場には言わなければならないのか。

これまで当たり前だった生活が、急にぐらつくような感覚になるのではないでしょうか。

診断を本人に伝えることと、その後の暮らしをどう支えるかについては、「認知症と告知することに、どんな意味があるのだろう」でも考えています。


自動車運転のことも、簡単には言えない

特に自動車運転は、その人にとって生活そのものに近いことがあります。

通勤。

買い物。

家族の送り迎え。

地域によっては、車がなければ生活そのものが成り立ちにくいこともあります。

それなのに、

「認知症だから運転はやめてください」

と言われたら、どう感じるでしょうか。

自分ではまだ運転できると思っている。

長年事故もなく運転してきた。

それなのに、突然

「もう運転できません」

と言われる。

一気に自分の生活が180度変わってしまうように感じるかもしれません。

もちろん、安全の問題はとても大切です。

でも、だからこそ、こちらの都合だけで話を進めるのではなく、ご本人が何を失うと感じているのかも考えなければならないと思います。


検査を受ける人の緊張も考えたい

認知機能検査を受けるときも同じです。

質問に答えながら、

「間違えたらどうしよう」

「点数が悪かったら認知症と言われるのではないか」

と思っていたら、当然緊張するでしょう。

私だって、

「この検査の結果で、これからの生活が変わるかもしれません」

と言われた状態でテストを受けたら、普段どおりには答えられないと思います。

検査する側にとっては日常的な検査でも、受ける本人にとっては人生を左右するかもしれない検査です。

この違いは忘れてはいけないと思います。


受診を勧めるということの重さ

今回の相談を通して、改めて感じました。

「病院に行った方がいいですよ」

と言うのは簡単です。

でも、その一言を受け取る本人にとっては、決して軽い話ではありません。

だからこそ、

なぜ受診するのか。

受診することで何が分かるのか。

治療できる原因が隠れている可能性もあること。

今の状態を一度きちんと評価しておく意味があること。

そして、本人が何を怖がっているのか。

そこまで考えながら、一緒に受診について考えていく必要があるのだと思います。


私はこの相談を受けながら、

「もし自分だったら」

と何度も考えました。

認知症に関わる相談では、専門職としての知識はもちろん必要です。

でも、それと同じくらい、

「自分がその立場だったら、どう感じるだろう」

と考えることも大切なのだと思います。

受診につなげることがゴールではありません。その人のこれからの暮らしまで、一緒に考える。

相談を受けるということには、それだけの責任があるのだと、今日は改めて感じました。

プロフィール
しるべ
しるべ
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師として、認知症疾患医療センターで認知症に関わっています。 これまで急性期病院での勤務経験があり、ケアマネジャー資格、家族の介護経験もあります。 専門職としてだけでなく、家族として悩んだ経験も含め、日々の関わりの中で感じたことや気づいたことを、自分の言葉で綴っています。 正解を押しつけるのではなく、「こんなこともあるよね」と一緒に考えられる場所にしたいと思っています。
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