家族は神様ではない。認知症介護は「二択」で考える
以前、家族会で認知症の方への関わりについて話をしていたときのことです。
あるご家族が、
「神様のようなことはできない」
と話されました。
その言葉が、今でもとても印象に残っています。
いつも優しくできるわけではない
認知症の方への関わりでは、
「優しく接しましょう」
「怒らないようにしましょう」
「本人の気持ちを受け止めましょう」
と言われることがあります。
もちろん、どれも大切なことです。
でも、毎日介護をしている家族が、いつも穏やかで、いつも優しくいられるかというと、なかなかそうはいきません。
同じことを何度も言われる。
何度説明しても、また同じことを聞かれる。
こちらも疲れていたり、気持ちに余裕がなかったりする。
そんなときに、介護をしている認知症の方が何か失敗をする。
普段なら気にならないようなことでも、イライラしてしまうことがあります。
私自身も介護をしていたとき、そういうことがありました。
自分に余裕がないと、優しくできない。
頭では分かっているんです。
本人はわざとしているわけではない。
認知症の症状もある。
でも、分かっていることと、実際にできることは別です。
私が家族に伝えている「二択」
だから私は、ご家族に一つの基準としてお伝えしていることがあります。
語弊があってはいけませんが、
「逃げるか、任せるか。この二択で考えてください」
とお話ししています。
ここでいう「逃げる」は、介護から逃げるということではありません。
イライラしてきた。
このままだと強い言い方をしてしまいそう。
そんなときに、いったんその場から席を外すということです。
別の部屋に行く。
トイレに行く。
少し外に出る。
ほんの数分でも、その場から離れる。
目の前にいると、どうしても言わなくてもいいことまで言ってしまうことがあります。
だったら、その場で頑張り続けなくてもいい。
いったん離れる。
それが、私の言う「逃げる」です。
もう一つは「任せる」
もう一つが「任せる」です。
自分一人で抱え込まず、誰かに任せる。
家族に任せる。
介護サービスに任せる。
支援してくれる人に任せる。
自分が限界になるまで頑張らない。
誰かに代わってもらえるなら、代わってもらう。
それでいいと思っています。
この話をすると、
「なんかスッキリしました」
と言われるご家族もいらっしゃいます。
もしかすると、
「認知症の人には優しくしなければならない」
「怒ってはいけない」
「自分がちゃんと介護しなければならない」
そんな思いを、ご家族自身が抱え込んでいるのかもしれません。
誰かに任せることや、暮らす場所を選び直すことについては、「認知症になったら、どこで暮らすのか②――自宅・施設・病院という選択肢」でも考えています。
家族は神様ではない
でも、家族は神様ではありません。
疲れることもあります。
腹が立つこともあります。
優しくできない日もあります。
家族会で聞いた、
「神様のようなことはできない」
という言葉は、本当にその通りだと思います。
だからこそ、優しくできなくなりそうなときには、
「逃げるか、任せるか」
この二択を持っておく。
頑張り続けることだけが介護ではありません。
いったんその場を離れることも、
誰かに任せることも、
介護を続けていくためには大切なことだと思っています。
少し余裕があるときには、ほかのご家族の工夫が参考になることもあるかもしれません。同じようにできなくてもよいのですが、「介護が上手な人と、うまくできない人。その違いは何だろう」では、認知症カフェで聞いた関わり方を紹介しています。
