認知症と暮らし・家族

嫉妬妄想だけを見ない③――できないことが増えても、できることまで奪わない

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嫉妬妄想が起きてから、どう対応するか。

今回の支援を振り返って、私はもう一つ考えるようになりました。

前回は、Aさんの「行きたくない」精神科受診に、どうつないだかを振り返りました。

夫婦の一方が、外出や家事など日常生活の動作(ADL)をしづらくなったとき、その変化を早めのサインとして見ることもあるのではないか。

夫婦の一方にADL低下が起きると、「生活の差」が広がることがある

痛みやしびれ、認知症、身体機能の低下などによって、外出や家事、人との交流が減っていく。

一方で、配偶者はこれまでと同じように外出し、趣味や仕事を続ける。

すると、夫婦の間に少しずつ生活の「差」が生まれていくことがあります。

もちろん、その差があるから必ず嫉妬妄想が起きるわけではありません。

ただ、認知症における嫉妬妄想では、夫婦間の格差が一つの要因として考えられることがあります。

今回の事例を振り返ると、ADLの低下だけでなく、夫婦の暮らしや役割の「差」にも目を向ける必要があったのではないかと思いました。

家族が気づける「早めのサイン」があるのかもしれない

家族の立場で考えてみると、

「最近、私一人だけで外出することが増えた」

「以前は一緒にしていたことをしなくなった」

「何でも代わりにやるようになった」

といった変化が起こっていることがあるかもしれません。

夫婦の生活に「差」が広がり始めたとき、それ自体を一つのサインとして見てもいいのかもしれません。

そして、家族の立場でも、こうした変化に気づいたときに、できることを少し考えてみてもいいのではないかと思います。

できることまで、全部なくさない

家族としては、

「痛いから無理をさせたくない」

「危ないから自分がやった方がいい」

と思うのは自然なことです。

実際、安全のために代わりに行う必要があることもあります。

ただ、

できないことが増えたからといって、できることまで全部なくしてしまわない。
その考え方は重要ではないかと思います。

料理なら、野菜の皮をむく。

盛り付けをする。

洗濯物をたたむ。

買い物に行けなくても、何を買うか一緒に考える。

できる範囲で役割を残すことで、

「自分にもまだできることがある」

「家族の中で役割がある」

と感じられることもあるのではないかと思います。

「一緒にすること」も残してみる

もう一つ、今回考えたのは、できる範囲で夫婦一緒に行動することです。

以前は一緒に買い物へ行っていた。

一緒に外食していた。

一緒に出かけていた。

それが、身体機能の低下をきっかけに、いつの間にか配偶者だけが外出するようになることがあります。

毎回一緒に行動することは難しくても、

「一緒に行ける場所は一緒に行く」
「一緒にできることを意識して残す」

そんな工夫もあっていいのかもしれません。

近くへの買い物だけ一緒に行く。

家で同じテレビを見る。

一緒に食事をする。

大きなことではなくても、夫婦で同じ時間を過ごす機会は残せます。

ADL低下を、身体の問題だけで終わらせない

今回の経験から感じたのは、

夫婦の一方にADL低下が起きたとき、変わるのは身体機能だけではない

ということです。

役割が変わる。

外出の機会が変わる。

夫婦で一緒にすることが減る。

「する側」と「してもらう側」という関係になっていくこともあります。

だからこそ、

「今、本人に残せる役割はないか」
「一緒にできることはないか」
「夫婦の生活差が大きくなりすぎていないか」

そんなことを少し考えてみることも、支援につながるのではないかと思いました。

そして、家族だけで抱え込まない

できることを残す。

一緒にできることを残す。

それでも難しくなってきたら、誰かに相談する。

今回の事例を通して、家族だけで抱え込まず、早めに誰かにつながることも大切なのだと感じました。

続く最終回では、相談できる場所を知っておくことが、本人と家族の大切な時間を守ることにどうつながるのかを考えました。

プロフィール
しるべ
しるべ
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師として、認知症疾患医療センターで認知症に関わっています。 これまで急性期病院での勤務経験があり、ケアマネジャー資格、家族の介護経験もあります。 専門職としてだけでなく、家族として悩んだ経験も含め、日々の関わりの中で感じたことや気づいたことを、自分の言葉で綴っています。 正解を押しつけるのではなく、「こんなこともあるよね」と一緒に考えられる場所にしたいと思っています。
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