認知症と暮らし・家族

「そんな話はきいていない」を防ぐために。入院前面談で感じたこと

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「そんな話は聞いていない」を防ぐために。入院前面談で感じたこと

今日は、精神科への入院を予定している方の入院前面談がありました。

近くの急性期病院から転院の相談を受け、当院で認知症の症状をみながら、内服の調整をしていく予定の方です。

面談には奥さんが来られていました。

入院前面談では、家族が望むことと、病院でできることが一致しない場合があります。今回の面談から、本人・家族・病院が入院の目的と見通しを共有する意味を考えます。

これまで献身的にご本人を支えてこられたのだと思います。

入院して、少しでも状態を整えてほしい。

その一方で、

「本人は家に帰りたがっている」
「できれば自宅に帰してあげたい」

そんな思いも感じられました。

おそらく、奥さん自身も迷っておられたのだと思います。

入院を選ぶのか。
本人の希望どおり自宅へ帰るのか。

家族にとっては、どちらを選んでも簡単に答えが出るものではありません。

「精神科に入院する」という言葉の重さ

精神科への入院には、今も抵抗感を持つ方が少なくありません。

特に高齢の方の中には、

「悪いことをすると精神科に入れられる」

といった言葉を聞いて育った方もいると思います。

精神科への入院が、治療というよりも、懲罰のような意味で受け取られていた時代があったことは否定できません。

特に地域とのつながりが強い場所では、

「精神科に入院した」

ということ自体を、本人や家族が大きな負担として感じてきたこともあったのではないでしょうか。

もちろん、現在の精神科医療は、そのような考え方で行われているものではありません。

それでも、昔からのイメージは簡単には消えません。

だからこそ、精神科への入院では、

「なぜ入院するのか」

「入院して何をするのか」

「どこを目標にするのか」

を丁寧に説明する必要があるのだと思います。

家族が精神科に対して、どのような不安や抵抗感を持っているのか。

そこを確認しないまま話を進めてしまうと、それだけで認識のずれが生まれてしまいます。

家族の希望と、医療でできること

今回、入院後は症状によって抗精神病薬などを使用する可能性があります。

薬によって症状が落ち着くこともありますが、高齢の方の場合は、眠気やふらつき、転倒、飲み込みの力の低下などにつながる可能性もあります。

そして、薬を調整したからといって、必ずしも家族が思い描いている状態まで戻れるとは限りません。

奥さんとしては、

「調整がうまくいけば、また家に帰れるのではないか」

という希望があります。

しかし、病院側としては、

「必ず帰れます」

とは言えません。

ここを曖昧にしたまま入院してしまうと、後になって、「そんな話は聞いていなかった」「薬を調整すれば帰れると思っていた」ということになりかねません。

だから私は、入院前面談というのは、単なる説明の場ではなく、家族が望んでいることと、病院でできることをすり合わせる場だと思っています。

少し時間がかかっても、ここは大切にした方がいい。

面談に来ていない家族のことも考える

もう一つ意識しているのが、面談の場にいない家族です。

後から、

「私は聞いていない」

「どうして入院させたのか」

という話になることがあります。

今回でいえば、奥さんが主に支えてこられた方です。

その方が説明を受け、何を心配しているのか、何を期待しているのかを確認しながら、一緒に決めていく。

これは家族に責任を押しつけるということではありません。

なぜこの選択をしたのか、その過程を医療者と家族で共有しておくことが大切なのだと思います。

本人にとっては、つらい選択かもしれない

そして、一番忘れてはいけないのは本人です。

本人は家に帰れると思っているかもしれません。

そこから再び病院へ入院する。

本人からすれば、

「どうして帰れないのか」

「なぜまた病院なのか」

と思うでしょう。

医療的に必要な入院であっても、本人にとってつらいことには変わりありません。

入院は罰ではありません。

本人を困らせるためでもありません。

本人と家族が、今より少しでも穏やかに生活できる方法を探すための一つの選択肢です。

だからこそ、入院することだけを目的にするのではなく、

本人はどう感じるのか。

本人が口にする「家に帰りたい」という言葉が、どのような安心を求める声なのかについては、「「家に帰りたい」の家は、どこなのだろう」でも考えています。

家族は何を望んでいるのか。

病院では何ができるのか。

そこを丁寧にすり合わせる必要がある。

「そんな話は聞いていなかった」

という言葉を、できるだけ聞かなくて済むように。

そして家族が、

「あの時、できるだけ考えて決めた」

と思えるように。

入院前のすり合わせには、時間をかける意味がある。

そんなことを感じた一日でした。

今日の面談を通して、もう一つ考えたことがありました。

それは、こうした状況になる前に、地域で何ができるのかということです。

それについては、また次の記事で書いてみたいと思います。

プロフィール
しるべ
しるべ
認知症看護認定看護師
認知症看護認定看護師として、認知症疾患医療センターで認知症に関わっています。 これまで急性期病院での勤務経験があり、ケアマネジャー資格、家族の介護経験もあります。 専門職としてだけでなく、家族として悩んだ経験も含め、日々の関わりの中で感じたことや気づいたことを、自分の言葉で綴っています。 正解を押しつけるのではなく、「こんなこともあるよね」と一緒に考えられる場所にしたいと思っています。
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